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る。訴えの提起の方式、期間、期日、送達、弁論手続、証拠および証拠調手続、判決、上訴その他の不服申立などのように、手続的な性格のものは、法廷地の訴訟法によるべきものと考えられる。主張責任、挙証責任、推定に関する規定は、わが国では実体法上の問題と考えられるので、それぞれの権利の効力の準拠法によることになろう。消滅時効の主張、相殺の抗弁、和解等についても、実体法上の権利に関するものは、それぞれの準拠法によると解される。この点について、たとえば、債権の消滅時効は、わが国では大陸法系の伝統に従って実体法上の問題とされるが、英米法系では出訴期間の制限は手続法上の問題とされている。証拠については、証拠方法、証拠資料、証拠原因、証拠能力、証明カはいずれも手続法上の問題である。
(2) 司法共助
裁判権の行使は主権の行使であるから、その領土主権の及ぶ範囲に限られ、外国の領域内に及ばない。外国で訴訟に必要な結果を得る方法として、訴訟行為の嘱託と司法共助とがある。訴状その他の文書の外国での送達、外国での証拠調べについて、裁判長が外国の管轄官庁または外国に駐在する日本の大使、公使または領事に嘱託してこれらを行うことができる(民訴第108条、第184条)。この場合、日本の大使、公使または領事がこれらの行為を有効に行うためには、当該外国の承認を必要とする。その形式としては、条約(主として領事条約)、覚書等による合意等政府間の取極め、黙示の承認などである。外国の管轄官庁に対して嘱託する場合でも、相手国で任意に応じてくれないかぎり、実効性はない。そこで、相手国の管轄官庁との間で相互に協力することを合意するという方法が行われている。これが二国間または多国間の司法共助条約である。わが国は、二国間の司法共助条約のほか、多国間条約として1954年の「民事訴訟手続に関する条約」と1965年の「民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書に外国における送達及び告知に関する条約」を批准している。
(3) 訴訟係属の国際的効果
一つの紛争に関しては一つの訴訟で解決することが望ましい。しかし、他国ですでに訴訟が係属しているからといって、直ちに後の訴えを不適当であると扱うのは妥当ではない。
たとえば、管轄権がないとの理由または相互の保証がないという理由で、その外国判決がわが国で承認されないことがありうるからである。したがって、原則として国際的に管轄

 

 

 

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